2011年8月1日月曜日

ブルドックソースの買収防衛策

今回は前回に引き続きまして、ブルドックソースの買収防衛策について書いていきます。
前回、スティールパートナーズに敵対的買収をかけられたわけですが、どのように逃げ切ることに成功したのでしょうか。

まず、ブルドックソースは現金を多く持っていることを疑問として出されたので、この現金を持っている理由をひたすら考えました。
こんなとき、神様はブルドックソースの味方をしたのかもしれません。

スティールが株を10%ほど買い占め始めたころ、非常に運がよく、企業買収の機会がやっていきました。企業買収のための資金で現金を多く持っていたという理由なら周りも納得するだろうと考えたのです。
西日本で強かったイカリソースが、厳しい資金繰りと、会長の詐欺事件の影響で信頼をガタ落ちさせ、会社更生法の適用申請を出したのです。

この絶好のチャンスをブルドックはものにし、35億円でイカリソースを買収しました。
ブルドックの現預金は87億円だったので残り52億円あります。
まだまだ、現預金の消費は足りません。ここでブルドックは新規事業に進出すると発表しました。

「新規事業に進出するために金が必要だった」

というふうにしたかったんですね。

経営陣は、新規事業に進出することで6年後には営業利益を3.5倍の25億円にすると発表しました。前回言ったようにこの時のブルドックの発行株式総数は1億9千万株です。スティールが発表したTOB価格は1株1700円で総額としては1700円×1億9000万株=323億円となります。

もし、ブルドックが発表したように営業利益が25億にできるならば323億円は13年分の営業利益の金額となり、ブルドックに対する正しいTOB価格ではないと主張することができ、実際に世論でもそのような考えが広がりました。

よって、株主総会では80%以上の賛成により次にいう買収防衛策が有効となったのです。


では、どんな買収防衛策がなされたのでしょうか?
それはスティール以外の株主には株式1個につき新株を3個、スティールには新株の代わりに現金を交付するというものです。


本に載っている例ですが、
もしAさんがブルドックの株式を1000株持っていたとします。
スティールのTOBを受けていたら、1700円×1000株=170万円手にしていました。
しかし、ブルドックソースを支持したために4000株×205円(2009年6月末)=82万円

実際は半分以上の金額を損してしまいました。


最後にブルドックの買収防衛策はなぜ安易に採用されてしまったのかをまとめとしてみていきます。

①スティールに明確な経営方針がなかった。そのためグリーンメーラーとして見られてしまった。
②世論が味方をした。
この2つに集約されると思います。

よって、企業買収に必要であり、本来あるべき買収防衛策とは、正しい時価総額を株価としてあらわすこと、世論を味方につけること、正しい経営方針と外部に発信し続けることであると思います。

アンケート

このブログにこれを書くのはちょっと的外れなんですが、twitterの人にはここが一番いいと思って載せました。

今「TOTO」について企業研究しているのですが、それに伴って、アンケートを取っています。

企業研究「TOTO」アンケート(番号で答えてください)
●自分が思う番号を書いてください。
ウォシュレットを
1、使用する
2、使用しない
3、外では使用しない

●2,3を選んだ人のみの質問です。
使用しない理由をあえて選ぶとしたら(複数回答可)
1、汚く感じる
2、気持ちが悪い
3、水がもったいない
4、時間が無駄
5、その他(理由を書いてください)

記入方法
例:使用する人


例:使用せず、汚く感じる人



これだけで大丈夫です!

ペーパーでは無記入ですので、コメントは自分が見次第すぐ削除し、個人名は一切公開しません(>_<)


マジでガチなやつなんで、ほんとに協力してください!
よろしくお願いしますm(__)m

2011年7月23日土曜日

ブルドックソース

みなさん、ブルドックソース事件はご存じでしょうか?さまざまな教科書にも載っているので、知っていることと思います。今回はそんなブルドックソースVSスティールパートナーズについて考えていきます。
前回任天堂の話をしましたが、ブルドックソースは任天堂と真逆の企業といってもいいでしょう。
前半戦として、なぜスティールがブルドックを狙ったのか、後半戦としてブルドックソースがどのような方法で買収を免れたかを話していきたいと思います。

次の図は岩崎日出俊さんの「M&A新世紀」という本から参照した図です。

少し見づらいのですが2000年の段階で株価は約600円です。発行株式総数は1億9000万株だったので、企業価値は114億となります。この株価が安いのか高いのか、まだこれだけでは判断しかねます。
そして、これがブルドックソースの貸借対照表です。

まずは左側、資産勘定です。ここでは流動資産として現預金と投資有価証券を足してみます(投資有価証券は売却すればすぐ現金が手に入るので、この後は簡略に現預金と表示します)。合計で87億円となります。
この企業を買収する際に114億円以上(実際は買収プレミアムが付くためもっと大きな額が必要となります)必要ですが、手に入れればもれなく87億円現金が楽して手に入るのですから、実際に払う金額は114億円+α-87億円となりおいしい買い物といえるでしょう。

さらにブルドックが失敗している点として、株価を上げることができていないということにあります。現預金87億円から、114億÷2=57億、57億円使って自社株買いを行えば、単純に半分の株を買うことができ、市場に出回る株式数が半減するため、理論上は株価が倍にすることができます。

そもそも、ブルドックが現金を多く持っている理由は何でしょうか?

ブルドックソースが行っているソース事業のリスクは何でしょうか?
新規参入者に対する脅威か? 競合他社の脅威か?

そんなことはないと思います。ブルドックソースって昔からあるし、しっかりブランドができていますよね?

そうです。こんなに現預金を持っている必要がないんです。


そのことを踏まえたうえで、貸借対照表の右側を見てみましょう。
借入金0、その他負債37億、資本勘定164億

借入金がないなんてすごく優良企業じゃないか!!



なんて思わないでくださいね。
企業の資本構成上負債の「節税効果」が入ります(タックスシールドともいう)。
法人税が課されるのは資本勘定ですから、負債勘定には課されません。従って、負債が多いほうが、投資家(株主+債権者)に対するキャッシュフローが大きくなります。

(間違ってたらすみません)

なのである程度までは負債を持っているほうが企業価値は上がっていきます。(あくまである程度です)

その点でもブルドックソースの貸借対照表はおかしかったといえ、株主資本を有効に利用していなかったといえるでしょう。

そんなこんなでブルドックソースはスティールに狙われてしまったわけです。

次回はなぜブルドックソースは敵対的企業買収から逃れることができたのかを見ていきたいと思います。

2011年7月20日水曜日

任天堂

 
前回のゼミで先生にぼろくそ言われてしまったので、分かりやすく砕いて改めて説明したいと思います。

ここでは前提として敵対的買収者がいると仮定します。

そもそも、どんな企業が買収されるのか、ゼミでも言いましたが、株価に対して現預金を多く持っている企業は狙われやすいです。

なぜか。

株価が安い企業(ここでは株式総額を50億円とします)が現預金をたくさん持っていると(現預金総額30億円とします)この企業を買収し、現預金を全て回収してしまえば、実質投資額は20億で済むことになります。

また、貸借対照表で考えるとするならば株主資産の6割は無駄に保持していることになります。
これなら余ってる現預金は投資するか、配当金として株主に返せと言われても仕方ありませんよね。
したがって買収した後に現預金を回収か、配当金をあげれば買収者は利益を得るわけです。

これが一般的な現預金を多く持ちすぎてはいけない理由です。

では任天堂はどうでしょうか。

任天堂の現預金は2009年3月31日時点で約7560億円、従業員一人あたりが1億8000万円の現預金を持っていることになり、売上高に対する現預金の割合が41%です\(◎o◎)/!(ちなみに2位のトヨタは12%)
驚愕の数字です!

それでは、なぜ任天堂が敵対的買収者に狙われないのか。

それは、
①株価が高いから
②キャッシュを持っている明確な理由があるから
③人材によって成り立っている企業だから

①の株価が高いというのは、最初に説明したとおり、株価に対して現預金を多く持っている企業が狙われやすいといいましたね?
ここでわかる人もいると思いますが、前述のように、買収の際には株をすべて(または大多数)買い取らなくてはいけません。したがって、株価が高ければ買収費用の縮小が行えないことになります。

②ゲーム業界のような、リスクが高い産業の場合、現預金を多く持っていなければ「勘定あって銭足らず」状態になり、黒字倒産してしまう可能性もあります。任天堂の場合、ゲームボーイとDSの間には15年間ありました(ちなみに販売台数が1億台を超えたのはゲームボーイ・DS・PS・PS2のみ)。
この間現預金たちは会社を支えていたのです。

③また任天堂の経営資源の1つとして貢献していたのが人材である。というのも大きな要因の1つです。企業買収において、人材で企業が支えられている場合は、買収を行うことによって人材がいなくなってしまうことも想定しなくてはなりません。

これらのおかげで任天堂は今のような成長ができていると考えられます。

経営者は合理的な理由があって初めて企業を守ることができるんですね。
(ただ、私は敵対的買収が悪だとは全く思っていません。)

それでは次回は、任天堂と比較して、ブルドックソースの例を何回かに分けて説明していきたいと思います。

2011年7月17日日曜日

お初

ブログ始めました。
って、誰に向けてのメッセージかわからないけども…
暇なときに書いていきます。

それでは第1回は私が好きな本真山仁先生の「ハゲタカ」です。

この本はファンドビジネスについて、ファンド所属の主人公鷲津政彦と銀行業の芝野健夫を中心に繰り広げられます。
くわしくはhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%B2%E3%82%BF%E3%82%AB_(%E5%B0%8F%E8%AA%AC)ネタバレあり

テレビでもハゲタカがやっていましたが、あれは真山さんが書いているわけではありません。確かに、テレビも面白かったのですが、はるかにこちらのほうが上です。企業買収の裏、そして黒い人間ドラマがまじまじと感じられる作品です。M&Aをかじりたいと思っている(私も含みますが)学生さんにはぜひ読んでいただきたい作品です。
それでは次回はもっと専門的に学んでいることを書いていきたいと思います。

アディオス!